#011 - AXシリーズ DEMO2008-06-01

世界初(?!)のデモンストレーション

「AX-2 宇宙輸送船ノストロモ」パッケージ
「AXシリーズ」(アスキー:1982~)は、PC-6001用のゲームソフト集です。 ゲームが複数入っていて、価格は2800円。 通常は1タイトルでそれくらいの値段でしたので、非常にお得感がありました。 しかも、パッケージが非常に凝っていて、美しいイラストが描かれたハードボックスにカセットテープとマニュアルが収められていました。
AXシリーズは「AX-1」から「AX-10」まで、全10本リリースされました。 どのゲームもクオリティが高く、中でも「AX-5 オリオン/クエスト」「AX-7 ポリス&ギャング」は傑作でした。 しかし、今回紹介するのは AXシリーズのゲームではありません。
「AXシリーズ」には、ゲームソフトの他に 「デモンストレーション」プログラムが収録されていました。 これは、収録されているソフトを説明する、まさに「デモ」のためだけのプログラムです。 この「デモ」に注目してみます。

「AX-1」~「AX-4」 DEMO

「AX-2」デモンストレーションのスクリーンショット集:クリックすると拡大して再生します
「AX-1」から「AX-4」までのデモンストレーションは、タイトルロゴの移動やモーフ、文字のスクロールや 画面のワイプを駆使して、収録作品を紹介しています。 サウンドと映像が非常に上手く同期した、1ループ約3分のアニメーションです。 「AX-2」のマニュアルには、 「PC-6001の持てる機能を最大限に引き出し、見ていて楽しいものを、という条件の元にすべてマシン語により作成した次第です」 と作者のコメントが書かれています。
SEと同期したアニメーションをパソコンで実現したソフトは、当時ほとんどなかったので、このデモンストレーションは 収録されたゲーム以上に驚きでした。 現在見ても、SEのセンスや、文字を表示する「間」の取り方が絶妙です。 テキスト主体のグラフィックにもかかわらず、「見ていて楽しいもの」という作者の狙いは 実現されています。
凝っているだけにプログラムサイズも大きく、「AX-2」には4本のゲームプログラムが収録されていましたが、デモンストレーションは どのプログラムよりもサイズが大きかったのです。 (写真は 「AX-2」デモ のスクリーンショット集:クリックすると拡大して再生します)

「AX-6」 DEMO

「AX-6」 デモンストレーション のスクリーンショット集:クリックすると拡大して再生します
続く「AX-5」ではデモがありませんでしたが、「AX-6」では、これまでと全く異なる手法のデモンストレーションが収録されていました。 マニュアルの言葉を引用します。
「前回のデモンストレーションでは 『見ていて楽しいもの』 を目標に作成したわけですが、今回は、 『聴いてみて不思議なもの(?)』 を目標にしてみました。 PC-6001のサウンド関係のある機能を最大限に引き出したこのデモンストレーション、とてもゆっくりと楽しむほどの時間は音が出ないのですが、まあ、PC-6001の新たな可能性を開発した、ということでお許しください」
このデモは、「映像」ではなく「音」の作品です。 「AX-6」のロゴアニメが表示された後の、グリーン一色の画面中に、パソコンが 「AX-6 by ASCII」 としゃべるのです。 ノイズが混ざった音声ですが、PSG音源で「しゃべる」ということは驚異的なことでした。 (写真は 「AX-6」デモ のスクリーンショット集:クリックすると拡大して再生します)
マニュアルには、「しゃべる」とは一切書いてない、というのが憎い演出です。 プログラムを起動して、耳で聴いて初めて驚く… そんな効果を狙ったのだと思います。

「AX-7」 DEMO

「AX-7」デモンストレーション のスクリーンショット集:クリックすると拡大して再生します
「AX-7」のデモンストレーションは、技術の集大成的な作品となっています。
にぎやかに鳴るBGMの中、ペンギンたちがフロッピーディスクを持ってきて、「AX-7」という文字を作っていくアニメーションです。 間違えた場所にフロッピーを置くペンギンや、せっかく正しく置いたフロッピーを移動してしまうペンギン、そしてそれを修正するペンギン…などやはり「見ていて楽しい」演出がなされています。 1箇所、最後の最後まで余計な場所に置かれているフロッピーは、U字磁石によって破壊されて「AX-7」が完成します。
私も当時、このデモが大好きで、何ループも見ていました。
マニュアルによると、プログラムエリアと解像度を両立させるために、横128×縦96ドットの特殊な画面モードを使用した、とあります。 このモードはメーカーが公開していた仕様にはありませんでした(作者はモード5と呼んでいます)。 「PC-6001の持てる機能を最大限に引き出す」という作者の姿勢がここに極まっている作品だと思います。

IMPRESSION

「AX-1」~「AX-4」のデモンストレーションは、収録作品の紹介という意味であったのに、「AX-6」以降は PC-6001の性能やプログラム技術のデモンストレーションになっています。 私はこの点にとても注目しています。
1990年代以降、AMIGAで「MEGADEMO」と呼ばれるデモプログラムが流行しました。 限られたプログラムサイズで ハード能力の限界を引き出す、という考えの元で 映像ソフトが盛んに制作され "デモシーン" と呼ばれるカルチャーにまで発展しました。
時代は遥かに前なのに、「AXシリーズ」のデモンストレーションの制作思想は、デモシーンのものと何ら変わりません。 あえて極論を言わせてもらえば、 「AXシリーズ」のデモは「国産初のデモ」であったし、もしかしたら「世界初のデモ」であったのかもしれません。
少なくとも、世界初の「市販された」デモ であったことは間違いないと思います。

APPENDIX

「AX-6」デモのリスト画面
「AX-1」~「AX-4」のデモの作者は、大葉浩美 氏。 「AX-6」のデモは、大葉浩美 氏 と 竹内あきら 氏の 合作。 「AX-7」のデモは五代響 氏 、大葉浩美 氏、竹内あきら 氏、Mr.U 氏 の合作です。
作者の大葉氏は、当時「有意義」という言葉がとても気に入っていたようで、マニュアルにも「有意義」という言葉が何回も登場しています。 また「AX-6」デモのプログラムリストには右写真のようなメッセージを入れています。
「AX-9」にもデモが収録されています。しかし、大葉氏が参加しておらず、また当時私がみていないということもあって、紹介は割愛します。 「AX-9」のデモはBGM付紙芝居、という内容でした。
「AXシリーズ」は今後もこのブログで紹介していくと思います。 「AX-5 オリオン」につきましては筆者のサイト olion ultimania をご覧下さい。
「AXシリーズ」のパッケージや内容については工房 杢琴舘 様のページに詳しい解説があります。

タイトル
AX-1~4 デモンストレーション
発表年
1982年
作者
大葉 浩美
プラットフォーム
PC-6001
パブリッシャー
アスキー出版
タイトル
AX-6 デモンストレーション
発表年
1982年
作者
大葉 浩美   竹内あきら
タイトル
AX-7 デモンストレーション
発表年
1984年
作者
五代響 + ひろみ & あきら & Mr.U
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